この夏は長距離サイクリングばかりしているけど、
走れば走るほど、もっと遠くまで走りたくなるから不思議だ。
これは一種の病気かもしれない。病名は“自転車バカ”ってやつかな?
そしてその病気がさらに悪化してしまうことを知りつつも、
今度はどこまで行こうかなぁ〜と北海道の地図を眺めるオイラであった。

目ぼしい場所が見つかると、すぐにカシミールにコースを入力。
走行距離や高低差を調べるという日が何日間も続いた。
旭川は近すぎるし、帯広は日勝峠がちょっとなぁ・・・。
そんなことをしているうちに、ようやく目的地が決まった。

宗谷岬・・・札幌からの距離は約350km。遠すぎるか?

日本最北端の宗谷岬はサイクリストたちにとって憧れの場所。
かどうかはわからないけど、少なくともオイラはずっと憧れていた。
いつかは自転車で日本一周、いや北海道一周でも構わないので、
この岬まで走ってみたいと思っていたから。

普通だと2〜3日くらいかけて走る距離なんだろうけど、
悲しいかなサラリーマンにそんな余裕のある日程を組めるはずがない。
「宗谷岬まで・・・1日・・だな」


9月には3連休があるので、宗谷岬サイクリングはその連休を
利用して行くことにした。スケジュールはこんな感じだ。

 1日目 札幌を出発。
 2日目 宗谷岬に到着。夜は稚内のホテルに泊まる。
 3日目 車にチャリを載せて札幌に帰ってくる。

2日目の夜はホテルじゃなくてテントに泊まることも考えたんだけど、
風呂の確保と安眠のことを考えるとテントでは心配事が増えてしまう。
お金はかかるけど、今回は素直にホテルに泊まることにしよう。
それによく考えればオイラはテントを持ってなかった! ハハハ(笑)

帰りの車はどうする? 奥さんに稚内まで乗ってきてもらおう(爆)
全てはオイラ=自転車バカの欲求を満たすため。
奥さんにとっては、まったく迷惑な話だよね。 感謝してますm(_)m

ところで当日は何時に札幌を出発すればいいのかな?
地図や断面図、そして自分の過去のサイクリングデータを見ながら
所要時間の予想を立ててみた。大体20時間くらいかかりそう。
宗谷岬で夕陽の写真を撮りたいから、夕方の16時には絶対に着きたい。
焦って走るのはイヤなので少し余裕をみて、18時に出発することに決めた。

出発1週間前。持って行く荷物の準備はほとんど整った。
天気予報を見ると今週末は晴れみたい。やったぁ!(^-^)
予約している稚内のホテルをキャンセルするなら今日までだ。
明日からはキャンセル料が50%もかかるらしい。
だけど、この天気ならキャンセルする必要なんて全然ないな。

全て予定通り。全て計画通り。


この前からずっとネットとテレビの天気予報ばかり見ている。
出発の日が近づくにつれ、予報が段々悪くなっているのだ。

日に日に天気予報の降水確率のパーセンテージは上がって行き、
そして出発前日の今日、ついに80%になってしまったのだ。

知ってるよ、アレでしょ? 違う天気予報だと晴れっていうパターンでしょ?
とか思って色んな天気予報を見てみたけど、結果は全く同じ。
しかも、札幌、留萌、旭川、稚内、走るルートのど地域の天気予報を見ても全部雨マーク。
間違いない。明日は絶対に雨だよぉ〜〜!!

このサイクリングには、もう中止も延期もない。
雨が降ろうが風が吹こうが走るしかないのだ。
なぜなら・・・もうホテルをキャンセルできないから。
さらには・・・みんなに行くって言いふらしちゃったから (>_<)
だってオイラはコンニャク並みの意志の弱さだよ。
前もって色んな人に宣言しておかないと、直前になって逃げ出しちゃいそうじゃん(笑)

そして、あわててレインコートと泥除けを購入した。
レインコートはダイソーで100円で買ってきた。
こんなので大丈夫かなぁ??しかも上半身用だけ。
もう1つ心配事がある。それはチャリのタイヤだ。
この夏はかなり走ったので、だいぶすり減っているし、
元々このタイヤは溝の全くないスリックタイプ。ツルツルタイヤなのだ。
このタイヤで雨の日に走ったことはまだないので不安だぁ!!

明日は徹夜の走行になるので、出発ギリギリの時間まで寝ておきたい。
いつもより夜更かしをして睡眠時間の調整をする。
明日はゆっくりと昼過ぎまで眠ろう。
そして午前4時、眠りについた zzz...


ゆっくり眠るつもりだったのに、ちょっとした物音で目が覚めてしまった。
時計を見ると10時を少し回ったところ。まだ起きるには早すぎる。
もう一度眠りにつこうとしたけど、心臓がドキドキしてきた。
まるで遠足の前日の子供のようだ。こうなるともう絶対に眠れない。
眠れない眠れないと思いながら布団に入っているのはすごく疲れる。

「ええい!もう起きてしまえ!!」

カーテンの隙間から外を見ると、道が濡れていた。
「やっぱり・・・雨、だよね。」
今は止んでいるようだけど、今日は苦しいサイクリングになりそうだ。
遅い朝食をとり、自転車の最終チェックをする。
雨に備えてビニール袋なども多めに持っていくことにしよう。

・・・が、ここで大きなトラブルが発生。
仏式バルブの空気入れアダプターがない!!
どうやら先日のセンチュリーランの時、会場に落としてきたようだ。
最悪です。タイヤに空気が入れられないじゃん!どうするよ?
直前になってバタバタするのは、いつものことだけど、
そんなオイラでも、この時ばかりはさすがに焦った。

アダプターを使わずに空気を入れようと試みるが全然ダメ。
20年前の携帯空気入れ(半分壊れている)を使ってみたけど全くダメ。
仕方なく、今日持って行こうとしていたCO2ボンベを使って
空気を入れることにした。1本400円。もったいないなぁ
しかも二酸化炭素って空気が抜けやすいんだよね。
宗谷まで空気がもれずにちゃんと走れるのかなぁ?

出発1時間前。この時を待っていたかのように雨が降り始めた。
空を見上げると「これからどんどん強く降らせまっせダンナ♪」
と言っているかのように黒い雲が広がっている。
でも、もうここでやめるわけにはいかない。

買ったばかりのレインコートを着てみた。
ピッタリだ!100円なのにキミなかなかやるねぇ!
レインコートについているフードをかぶろうとしたけど、
ヘルメットの上からではキツ過ぎて、かぶれない。
そこでフードを先にかぶって、その上からヘルメットをかぶってみた。
これなら大丈夫だ。でも今度は耳が聴こえない。
結局、フードはエリの中にしまうことにした。

グローブどこだっけ? あれれ?サングラスは??
なんかこのヘルメットキツイぞ〜!
とかモタモタしているうちに、出発の時間がやってきました。


9月17日 18時10分
奥さんに見送られながら札幌を出発!!
すでに陽は沈み空が暗くなっているが、
オイラの長い1日はこれから始まるのだ。
天気が悪くて気持ちはちょっと凹み気味だけど、
それでも走れるという嬉しさのほうがまだ勝っている。

この時点で装着したライトは全て点灯。
この前、4つのLEDライトを合体させて作ったライトは
部屋の中でテストした時は、すごく明るかったのに、
今ここで使うとあまり明るくは感じない。
雨で暗く感じるせいもあるだろうけど・・・また不安が1つ増えてしまった。

今回、滝川まで走るコースには国道275号線を選んだ。
最初は、何度か走ったことのある国道12号線を走る予定でいたけど、
会社の先輩に「275号のほうが近いんじゃない?」と言われて、
調べてみたら275号のほうがだいぶ距離が短かったのだ。

家を出てしばらくは豊平川に並行して国道を走る。
交通量も多いし、路駐している車も多くて走りづらい。
まだ自分のペースもつかめていないし、このタイヤがどれほど
グリップしているのかも、よくわからない。
第一、家を出て3km走ったところから先は、
オイラは車でも一度も走ったことがない道なのだ。
とにかく慎重に走ろう。向かい風が強く前途多難。

レインコートの上に安全ベストを着ているのだけど
交差点とかで隣りに人がいると、まだこの格好に
慣れていないせいか、ちょっと恥ずかしい。

豊平川にまたがる雁来大橋を渡る。この橋を渡るとすぐに江別だ。
橋の上で強風にあおられて、いきなり転倒しそうになる。
そうでなくても雨でタイヤが浮き気味なのに、危ない危ない。
長距離サイクリングは、色んな状況の下で走ることになるので、
ハイトリムのホイールはできれば避けたほうが良いと思った。
トンネルギライに続き、橋もちょっとキライになってしまった。
トンネルは恐怖、橋は強風。(シャレじゃないよ)

19:20 当別に到着。
出発して1時間ちょっとしか経っていないけど、
まずは奥さんに電話をして無事を報告。
(本当はちょっとリタイアしたい気分かも・・・)


家を出発してここまでの平均速度は24.5km/h。
この先は、きっと段々ペースが落ちていくと思うけど、
とりあえずここまでは、雨なのにまずまずのペースで走れている。
過去の長距離サイクリングのデータを調べてみると
平均速度は大体23〜24km/hくらい(休憩時間は除く)
このくらいのペースが自分にはちょうどいいようだ。

当別を過ぎると店や街灯が徐々に少なくなってきた。
きっと雲がなければ星がキレイに見えるんじゃないかな。

少しだけ雨が小降りになった。
水溜りがあるので、走りにくさに変わりはないけど、
きっと晴れた日の明るい時間に走ったら、
この辺りの道は快適なんだろうな。

道は大きく右に左に曲がりながらもずっと平地が続く。
「道民の森」の看板が見えた。こんなところにあるのか。
何があるのかは知らないけれど、名前だけは聞いたことがある。
きっと森があるのだろう。
ってマジでそんなことを考えながら走っている自分は
かなりイッちゃってるかもしれない。
DHバーの先端を握り、30km/hペースで順調に進む。

当別を出て1時間弱で月形に着いた。
ここまではずっと平地なので、脚は全然疲れていない。
また家に電話をかけるために、商店の軒下で雨をしのぎながら休憩。
補給食を1つつまんだ。ついでにタバコも1本(^-^;)吸った。


20:20 月形を出発。
路肩には水溜りができていて、それを避けるように走るので
自分の思い通りのラインを走れない。
ちょっと油断すると、水溜りにバシャーンと突っ込んでしまう。
当然、靴はビチョビチョ。靴の中までグショグショ。不快この上なし。
でも、だいぶこの暗さにも慣れてきたし、ペースもつかめてきたぞ。
この調子で行ってみよう!!

苦痛を通り越して、かなりハイテンションになってきた。
「た〜のしぃ〜♪」と叫びながら走る。←アホか?

月形を越えた辺りから急に車の交通量が少なくなってきた。
いつもなら車がいないほうが走りやすくてラッキー!となるのだけど、
今日はそうは思えない。車がいなくなると本当に本当に真っ暗なのだ。
街灯が全然ない。自分のライトが照らす数メートル先の白線しか見えない。
お願いだから車が来てくれないかな。

そう願っていると車が前からやってきた。
いざ車が走ってくると、今度は急に邪魔に思える。
走ってくる対向車のライトはほとんどがハイビームだからだ。
ロービームで走ってきた車も、オイラの姿が目に入ると、
たいていハイビームに切り替えるのだ。
「やめてくれ〜!まぶしいんだよお〜!!」
車が通り過ぎるまでの間は、ライトの明かりが路面にも
乱反射して前が全く見えなくなるのだ。
そのたびにブレーキをかけて徐行する。これは本当に危険だった。

交通量が多いほうが良いのか悪いのか、自分でもよくわからなくなってきた。
1つわかったのは、晴れた昼間のサイクリングと比べると、
夜は危険、雨も危険。そして夜+雨は超危険ということだった。

21:00 浦臼を通過。調子がいいのでこのまま走ることにした。


浦臼駅を越えてしばらく走ると、左手に「道の駅つるぬま」があった。
ちょっとトイレに寄っておくかな。そういうわけで休憩。
持ってきたゼリーとクッキーも食べておく。

駐車場にはキャンピングカーも何台か停まっている。
どこまで行くのだろう。ここで夜を明かすのだろうか?

21:20 道の駅を出発。
10kmほどの長い直線が滝川まで続く。
ほとんど民家もなく、いくら走っても景色が変わらない。
景色が変わらないと言うよりも、雨と暗闇で何も見えない。
タイヤが水を掻き分ける音だけが聴こえる

直線区間が終わると交差点を左折、そしてまた右折して、
新十津川橋という少し大きな橋を渡った。
周囲は暗いのに橋だけが街灯に照らされ、
妙に明るいのが却って不気味に見える。
なんか出そうな雰囲気だ。

22:50 碧水(へきすい)に到着。走行距離が100kmを超えた。
ここまでで、ようやく全行程の3割ほどを走ったことになる。
「どうよ?自分。このまま走り切れそうかい?」と自問自答してみる。

碧水にはコンビニがあったけど、
全身びしょ濡れなので入るのが躊躇われる。
ちょうどよく屋根付きのバス待合室を見つけたので、
ここでしばらく休憩することにしよう。


夜の23時。いつもなら夜はこれからという時間だ。
お茶を飲みながらパソコンの前でのんびりとホームページを見たり、
メールを打っている頃だと思うけど、今日は真夜中のように感じる。
もう、車もほとんど通らなくなった。
ここから先はさらに寂しい道になっていくのだろう。心細い。

今回は、心細さを紛らわすためにMP3プレーヤーを持ってきた。
お気に入りのELTの曲を中心に100曲くらい入れてきた。
でも雨でイヤホンに水が入ってしまいそうなので聴けない。
それにイヤホンを着けて走るのは、この状況ではとても危険だ。
かすかな明かりと耳から入ってくる音だけが唯一の情報だというのに、
この状況で耳までイヤホンで塞いでしまったら・・・危なすぎる。

23:20 碧水を出発。
相変わらず雨は降り止まないし、道もすごく暗い。
しばらく走ると、今年3月に開通したばかりの「北竜ひまわりIC」に着いた。
インターチェンジの出入り口といっても信号の1つさえない。
ここを過ぎると標高100mほどの美葉牛峠。
今回走るコースで、唯一標高が100mを越えるのがこの峠だ。

街灯が全くない。暗い・・・暗すぎる。本当に何も見えない。
完全な暗闇。自分のヘッドライトが照らす数メートル先しか見えない。
実際にこの状況の下で走らないと伝わらないかもしれなけど、
ものすごい恐怖に襲われた。クマが出そうな雰囲気だ。
年甲斐もなく「こえ〜。こえ〜よぉ〜〜」という言葉を
口にしながら逃げるようにペダルを回す。

山道を登っていると、頂上の近くに1つだけ街灯があった。
その光は天使であるかのように輝いて見えた。

美葉牛峠を越えるとしばらくは下り坂。
なぜか、水溜まりの水が透明ではなく乳白色に濁っている。
ということはこの道はダンプトラックのルートなのか?
ということは砂利とかが落ちているかもしれない。
ヘッドライトで照らせる距離はせいぜい数メートル。
その先は黒の世界で何も見えない。
スピードを落として慎重に走ることにした。

ここまでは平地だったので、ずっとブレーキを使っていなかった。
下り坂で久しぶりにブレーキを強めにかけると、
ジャリジャリというかギーギーというか、とにかくすごい音鳴りがする。
巻き上げた泥や小石がリムに付着していて、それが音鳴りの原因になっているようだ。
効きが悪くてなかなか止まらない。
一旦自転車を降りて、ティッシュでリムを拭いてみたけど、あまり意味はなかった。

留萌まであと数km。民家が少しずつ増えてきた。なんだかホッとする。
屋根つきのバス待合室があったので、ここで休むことにした。
碧水で休んだ待合室とは違って、ここのはガラス扉までついている。
かなり気温が下がってきたような気がする。
頭から足のつま先までズブ濡れなので、止まると急激に体温を奪われる。

20分ほど休憩して、留萌に向けてまたペダルをこぎ始めた。
町の明かりが増えて、道も明るくなり、かなり走りやすくなってきた。
まだ開いている大型スーパーなどを見ながら走っているうちに
1:15 留萌に到着。いつの間にか日付が変わっていた。


さっき休憩したばかりだし、留萌はそのまま通過しよう、
・・・と思った矢先に道を間違えてしまった。
曲がらなくちゃいけない信号を通り過ぎてしまい、慌ててUターン。
目印にしていた昭和シェルのガソリンスタンドがなくなっていたのだ。
ガソリンスタンドは今のご時世、潰れるところも多いので、
目印にするのはやめたほうがいいかもしれない。
コンビニを目印にしたほうがまだ良さそうだ。

それと、休む場所を見つけた時は迷わずに休む。
補給できる場所を見つけた時は迷わずに立ち寄る。
これは北海道をサイクリングする時のオキテだと思う。
もう少し頑張って走ってこの先で・・・と思っても
この先には休む場所も店もないかもしれないのだ。

留萌まで来て、初めて青看板に「稚内」という文字が現れた。
「よぉ〜し、あとちょっとだ!!」
・・・って、あと185kmもあるよ (>_<)
しかもオイラの目的地は稚内じゃなくて
そこよりさらに30kmも先の宗谷岬だった。
あと215km・・・。ツライ。

留萌を過ぎると、ここから先はずっと日本海沿いの道。
オロロンラインと呼ばれているルートです。

雨が段々と本降りになってきました。
体を動かしているので心臓に近い部分は寒くないんだけど、
指先とかの末端部分は寒さでしびれてきました。
足の指の感覚はすでにありません。

1:40 小平に到着。ここまでの走行距離145km。
またまたバス待合室を見つけ、ここで休むことにしました。


小平のバス待合室にて・・・。

札幌を出発してからここまで苦難だらけです。
最初の頃は、雨で走りにくいとか濡れるとか、
そんなことを言ってたような気がするけど、
しばらくすると、暗いとか怖いとかの、別の苦しさに変わり、
そして今、一番の苦しみは「寒さ」に変わりました。
じっとしていても、唇の震えが止まりません。
きっと今、オイラはものすごい顔をしているんだろうな。

ここから斜め向こうを見るとローソンが見えます。
「温かいものが食べたいよぉ〜」
またチラッとローソンのほうに目を向けると、
見慣れた看板の下に「うどん・そば」という文字が。
温かそう。おいしそう♪ たべたい。

でも・・やっぱり。
あらためて自分の姿を見てしまうと、こんな姿で店には入れないよ。
ビショビショになったタオルをしぼりながら体を拭き、
持ってきた残りわずかのクッキーを口に入れました。

時計を見ると、ちょうど2時でした。
この場所の到着予定時間は3時半だったので、
ここまではだいぶ速いペースで走ってこれたようです。
せめて太陽が出てくれれば、この状況も少しはよくなるはず。
早く夜が明けないかなぁ。

呼吸を止めて、ジッと目を凝らすと、全身から湯気が出ているのが見えます。
今、気温はどれくらいなのだろうか?
意味のないことと知りつつも、ライターで指先をあぶってみたりする。
靴を脱ぎたいけど、一度脱いでしまうともう履けないような気がする。
それに今、足の裏は一体どんな状態になっているのだろう。
見るのが怖くて脱ぐことができない。

雨は相変わらず激しく降っていたけど、このまま休んでいても
体は温かくならないし、ゴールまでの距離も縮まらない。
30分ほど休み、小平を出発することにした。
休憩を終えて濡れたヘルメットを被る瞬間がものすごくイヤだった。

数km走ると小平トンネル、今回走るルートで唯一のトンネルです。
オイラはトンネルの中を走るのが嫌いなので、心配していたんだけど、
この小平トンネルはまだ新しいトンネルみたいで、歩道がすごく広い。
車が1台通れるんじゃないか?と思えるくらい広くてすごく快適。
それにトンネルでは1台の車ともすれ違わなかった。
このままずっとトンネルが続けばいいのに、
雨にも当たらないしここで寝ちゃおうか、と思ったくらいでした。

さらに激しく雨が降ってきました。
しかも色んな方向から雨が降ってきます。
前方からは大粒の痛い雨。下からはフロントバックから跳ね返ってくる雨。
左からは日本海の風と波しぶき、右からは車が跳ね上げる水しぶき。
さらに水溜りに入るごとに靴にはザバザバと水がかかります。
地獄絵とは正にこのこと。

小平から苫前の距離は33km。
この時、ついに苦痛がピークに達しました。

旅は計画通りにならないから旅なんだよ。
うまくいったら想い出には残らないから。
その言葉が何度も何度も頭の中で繰り返される。
この雨って、きっとそういうことなんだよね?

3:30 苫前に到着。またバス待合室で休憩することにしました。
ここまでの走行距離178km。ようやく半分を超えました。
もし、ここでリタイアして札幌に引き返しても、
ゴールを目指しても距離は一緒。ならば前に進もう!


苫前を越えると、徐々にアップダウンが増えてきました。
でも長い登り坂はないので、坂の手前で少しスピードを
上げておいて、その惰力を使ってクリアしていく感じ。

雨と寒さで精神的には疲れきっているけど、
脚のほうは思いのほか疲れが溜まっていない。
雨でスピードが出せないことが幸いして、
あまり無茶な走り方をしていないからかもしれない。

都市までの距離が書いてある青看板。
自分のすぐ目の前にその看板があるということだけはわかるけど、
暗くて何が書かれているか全く見えません。
仕方なく一度止まって、ハンドルを持ち上げて、
ヘッドライトを上向きにして看板の文字を確認します。

しばらく走ると道路工事をしていて、片側通行になっていた。
誘導灯を持った警備員のおじさんが見えます。

人だよ、人!!
立っている人の姿を見たのは久しぶりだった。
最後に見たのはキャンピングカーが止まっていた道の駅だもんな。

そして工事現場を通り過ぎようとした時、
その警備員のおじさんが「お疲れさま〜!」と声を掛けてくれた。
突然のことでびっくりした。
久しぶりに人と話したぞ!!しかもこんなオイラに声をかけてくれるなんて。
オイラもすかさず「お疲れで〜す」と声を掛ける。
ちょっと元気でたかも。オイラとお揃いのベストを着てたし(笑)

サイクルメーターの表示がついに200kmを超えた。
持ってきた補給食が底をつき、続いて飲み物もなくなった。

4:50 初山別に到着。また待合室で休憩する。
この町にはコンビニが1軒もなかった。

そう言えばコンビニに入れなくても自販機があるじゃないか。
自販機で温かい飲み物も売っているんじゃないか?と思って
自販機を見つけるごとに立ち止まりパネルを見てみたけど、
いくら北海道といってもまだ9月。
どの自販機を見ても「HOT」「あたたか〜い」の文字はなかった。


初山別を過ぎたあたりで、ようやく東の空が白みかけてきた。
待ちに待った日の出の時間が近づいてきたのだ。
道がよく見える。海も見える。山も見える。
ボロボロになったオイラの姿もよく見える(笑)
明るいって素晴らしい!!太陽ってすごい!!
嬉しくなってブログにも写真を送った。

遠別まであと20km。もう食料がありません。
勇気を振り絞って、次のコンビニで調達しないと、死んでしまう。
明るくなってきたせいか、急に眠気が襲ってきました。

この辺で、いくつものメカトラブルに見舞われた。
細かいアップダウンを繰り返しているうちに、ブレーキが効かなくなったのだ。
留萌の手前からずっとギーギー音鳴りがしていたけど、なんだか危険な状態。
ブレーキシューにアスファルトの破片でも刺さっているのかな?
ブレーキアーチの辺りから真っ黒い油のような液体が流れています。
立ち止まってブレーキシューをはずしてみたけど、原因はわからず。

さらには、後ろのギアの大きいほう3枚にギアが入らなくなってしまった。
ようするに軽いギアが使えなくなったのだ。
まぁ急な坂はないので、このトラブルはなんとかなりそうだ。
原因はフロントバックとシフトワイヤーの干渉によるものだ。
フロントバックさえ取り外せばこの症状は直るので、
調整はせずに放っておくことにした。

そしてもう1つのトラブルは油切れ。
チェーンとギアからギーギー擦れる音がする。
雨でチェーンとギアが洗われて、完全に油が切れた状態に
なってしまったのだ。残念ながら油は持ってきてない。
奥さんの車が着くまでは、このまま走るしかない。

6:30 遠別のセイコーマートに到着。
濡れたタオルをしぼって、できる限り体を拭き、
すみません・・・ホントすみません・・・という感じで店内に入る。
オニギリとパンと、カロリーメイトを買った。温めてもらい足早に店を出る。

「うまいっ!あったか〜い」
今までなんでこんなことに気がつかなかったんだろう。
たったオニギリ1個でこんなに幸せな気持ちになれるなんて・・・。

奥さんからのメールが届いた。ちょっと前に札幌を出発したようだ。


少しだけ身体が温まったので、コンビニを出発。

気温が徐々に上がってきた。
食事したので体温も徐々に上がってきた。
そして否応なく眠気が襲ってきた。

もうろうとした状態でペダルを回す。
こんな状態なので、遠別→天塩の記憶はほとんどない。

意識が飛び、ハッ!と我に返ること十数回(たぶん)
意識が飛んでも、それでもペダルだけはちゃんと漕いでいた(笑)

天塩に到着。道の駅があるのでここで休憩することにした。
朝早いのに、10台ほどの車が停まっている。

道の駅の建物の横に蛇口があるのを発見!
ブレーキの不具合はやっぱり気になるので、
タイヤをはずして丸洗いしちゃおう。
・・・とタイヤをはずしたところまでは良かったが
蛇口をひねっても水が出ない。
元栓から止められているようだ。
確認してからタイヤをはずせばよかった・・・。
仕方なくまたタイヤを元の通りはめた。


天塩を出発。
ここから稚内までは、内陸側の道(国道232号&40号)を走るルートと、
海沿いの道(道道106号)を走るルートがあるが、海沿いの道を選んだ。
この道道106号は、途中から民家も電柱も何もない道なのだそうだ。
何もないんだよ。すごいと思わない? 走ってみたい。

天塩から5kmほど行くと、道は大きく左に曲がり天塩河口大橋へと向かう。
かなり大きな橋だ。
橋の中央部分まで走ったところで自転車を止めて、
しばらくそこからの景色を楽しんだ。
すごい!自転車でここまで来たということもあるだろうけど、
この風景の大きさは実際に見た人じゃないとわからないかもしれない。

走行距離がついに250kmを超えた。
これまでの240kmという自分の記録は超えたけど、
ここまで来ると、何km走ったとか何時間で走ったとかは、
もう意味のないどうでもいいことのように思えてきた。
そんなことを思いながら走っていたら、雨が止んだ。

右手にたくさんの風車が見えてきた。一体何本あるのだろう。
こんなにたくさんの風車が並んでいるのを見たのは初めてだ。
すぐ近くに見えるけど、いくら走ってもなかなか辿りつかない。
北海道のスケールの大きさをあらためて実感した。

ようやく風車の横まで来た。近くで見るとやっぱりでかい!!
そして、またここからが大変だった。
風車の本数を数えながら走るが、1機1機の間隔が広くて
数えている途中で数を忘れてしまった。
結局この風車の始まりから終わりまでは約3km、走るのに10分近くかかった。

風車に感動しながらしばらく走っていると、
今度は北緯45度のモニュメントがあった。
せっかくなので自転車を置いて、記念撮影をした。
「北半球ド真ん中」と書かれている。
意味はわかるけど何だかパッとしない。
赤道に行って「地球ド真ん中」って書かれていたら、
おおぉ!スゲェ!! って思うのだろうけど。
やはり日本最北端という響きのほうがオイラは魅力を感じるなぁ。

北緯45度モニュメントのちょっと先にはシェルターがあった。
このシェルターは、吹雪で運転するのがヤバそうになった時に、
この中に車を停めて待機するためのものらしい。

後ろを振り返ると黒い雨雲が・・・。
もしかして雨雲を追い抜いたのかな?
左手前方には利尻島が見える。
雲がかかっていて全体像はつかめないが、あれは利尻富士だ。

この道は一体どこまで続いているのだろう?
どこまでもまっすぐな直線と、何もない風景が続く。

ペダルを回しては止め、回しては止め
ということを繰り返しゆっくりと前に進む。
それにしてもスピードが出ない。向かい風が強くなってきた。
天塩から先は携帯(FOMA)の電波が届かなくなった。
電話はできないし、当然メールもできない。
予定していたポイントよりもかなり先まで走ってしまった。
奥さんはどこまで走ってきてるのかな?
頭上を覆っていた雲が切れ、ついに太陽が顔を出した。

天塩を出てから、だいぶ走ったし、もう雨は止んだので
レインコートを脱ぎたい。一旦休憩することにした。
雨上がりは虫が多い。
どこかで雨宿りをしていた虫たちが一斉に活動を始めるためだ、
と自分では思っているけど、本当の理由はわからない。
休憩していると虫たちが寄ってくる。
追い払おうとするが、数が多すぎて勝負にならない。
すぐに休憩はやめてまた走ることにした。

次の目的地、抜海まであと少しというところで、
うねうねと波打つような坂道に入った。
小さな展望台のようなところがあったので、
ちょっとだけ自転車を停めて海を眺めることにした。

北海道は広いなぁ〜と感慨にふけっていたら、
何やらサイレンの音がさわがしい。
スピード違反の取締りをやっているらしい。
あっちへ行ったと思ったら違反車を捕まえ、
戻ってきたと思ったらまた別の車を捕まえ、
パトカーが行ったり来たりしている。
ここは取り締まりの名所なのか??

そろそろ出発しようとしていたら、奥さんの車がやってきた。
よくもここまで走ってきたものだ。お疲れさま。
おにぎりを1個食べて、自転車に油を注して、出発。

手塩から抜海までの区間は、噂通り、本当に家が1軒もなかった。


抜海までやってきた。
このまま真っすぐ走ると稚内。左の海沿いの道を走るとノシャップ岬。
せっかくここまで来たんだし、ノシャップ岬まで行ってみよう!

そこから岬まではすぐだった。
12:10 ノシャップ岬に到着。
3連休の2日目ということもあり、駐車場には車がたくさん停まっていた。
ノシャップ岬と書かれた看板の前で座っていると、
記念写真を撮るために観光客が次から次へとやってくる。
数人の人たちにシャッターを押してくださいと頼まれた。

「手が汚れているんですけど・・・」
「構わないです。お願いします」

本当にいいのか?オイラが逆の立場だったら、
こんな薄汚れた人に大事な自分のカメラを渡すのはイヤだぞ。

急に自転車に乗るのがイヤになり、海に自転車を投げ捨てた →
というのはもちろんウソ(笑)


ノシャップ岬を出発。
走る車も、歩く人も、家も店も増えてきた。
今夜泊まる稚内は素通りして、ゴールの宗谷岬を目指した。


ノシャップ岬から宗谷岬までは、大きく弧を描くように
湾になっていて、左後ろを振り返ると、
たった今走ってきた道すじ、街並みを見ることができる。

ついに宗谷岬の看板が!急に足が軽くなった。
30km/hの速度で快調に飛ばす。もう眠気も完全にすっ飛んだ。
一漕ぎ一漕ぎ、噛みしめるようにしながらペダルを回した。

誰かが「ガンバレー!」と車から声援を送ってくれた。
う〜ん☆あんがとっ!

宗谷岬まであと2kmになった。
このままゴールしてしまうのが急に名残惜しくなった。

道路のすぐ脇で、ママチャリの横に立って海を眺めている人がいた。
右手には棒のようなものを握られている・・・釣り人かな?
良く見ると、自転車の前カゴにはハンガーとか洗濯バサミとか
色んなものが詰め込まれている。地元の人か?よくわかんない。

宗谷岬に立つ赤と白の灯台が見えてきた。
ネットで何回も見たあの灯台が今オイラの視界の中にある。

最後のカーブを曲がると、先に到着して写真を撮ろうとしている
奥さんの姿、そして日本最北端のモニュメントが見えた。

13:47 念願の宗谷岬・・・ゴール!!!


車の横で自転車を停めたが、
奥さんに「どうせなら、あそこまで行かなくちゃ」と言われ、
モニュメントの前までまた走る。

「やった!ついに着いたぞ!」
言葉にならない感動に包まれる。

宗谷岬は、サイクリストや二輪ライダーの人たちしか来ない場所で、
もっと寂れた場所なのかと思ってたのに、
たくさんの人がいて普通の観光地だった。
まずはモニュメントの横に座り込んで勝利(?)の一服。
順番待ちをして、記念写真を撮った。

「日本最北端のモニュメントの前で、自転車を持ち上げて
写真を撮るのは、人目が気になってかなり恥ずかしい」
と誰かのページに書かれていたけど、
ここまで来たんだし、あのポーズで撮る以外は考えられない!!
ということで、あのポーズで写真を撮った。

記念撮影した後、横を見るとさっき追い抜いたママチャリの人がいた。
話しかけると、実は横浜からママチャリで走って来たのだと言う。
しかもこの後は南下して、日本一周する予定だという。
すげえ。すごすぎる。オイラの苦難なんてたかだか1日のこと。
でも彼はこれから先、まだ何日間、いや何ヶ月間も
大変な思いをすることになるのだ。
記念に一緒に写真を撮って、彼の検討を祈った。

その後、自転車を分解して車に積み、宗谷岬でラーメンを食べてから、
奥さんの運転で今夜泊まる稚内のホテルへと向かった。
助手席に座り背もたれを倒すと・・・1分経たずに深い眠りにおちた。

こうして札幌→宗谷岬サイクリングの長い1日は幕を下ろしました。

苦しかったけど、今思い出してみるとそれ以上に楽しかった気もする。
そして、雨さえ降らなければもっと楽しめたかもしれない。
雨さえ降らなければまだまだ長い距離だって走れそうな・・・。

雨さえ降らなければもっと??
やはりかなり重症の病気にかかってしまったようだ。
宗谷岬を超える長距離サイクリングの計画はすでに始まっている・・・。

走行データ
 走行時間  19時間37分35秒  (実際にかかった時間) 夜中は雨宿りをしながらかなり休憩を取った。
 実走時間  14時間22分31秒  (車輪が回っていた時間) この時間だけを見ると短いような気がする。
 走行距離  355.9km  よく走ったなぁという感じ。自分ではもうこの距離は抜けないと思う。
 平均速度  24.6km/h  このアベレージは自分では大満足。後半まで速度は落ちなかった。
 最高速度  51.8km/h  初山別の辺りでマーク。

(↓コース断面図をクリックすると拡大できます)

<< BACK  [REPORT1]  [REPORT2]  [REPORT3]  [REPORT4]